秋分の日に米沢市にいた。
秋の連休を利用して、置賜白川で釣りをしていたが、夜はアタゴオルの物語をひたすら読んでいた。
今シーズン、渓流釣りで何となく来てみたのだが、元々アタゴオルシリーズは嫌いではなかったし、その地に来ているという思いから、Kindleで何冊か買って読んだ。
昔にも紙でかなりの量を読んでいたはずだが、殆ど憶えていなかった。
似たような話が多いので忘れやすいのだ。
ただ、今回の読書体験は以前より鮮烈だった。
歳を重ねるほど、この物語は良いのかもしれない。
若気が抜けて、人生の残りが計算できるようになって、この物語の底に流れる締感が自らのものとなるようだ。
だからこそ、この物語が懐かしく、また愛おしいのだろう。
あと、初期のアタゴオルの原型は米沢を舞台にしており、地方の異世界化に成功している。
宮沢賢治ばりの仮想空間化は、ますむらひろしならでこそだろう。
置賜白川の渓流に入って東北の森を見ていると、こちらの森は本当に豊かだと感じる。
やはり紀伊半島の森は杉や檜ばかりで、ここの森と比較すると砂漠のように味気ない。
どうしてこんなに違ってしまったのだろう。
冬に雪が降る地方とそうでない地方の違いだろうか。
否、これは根元的な豊かさの違いでは無かろうかと思う。
一般的に西日本の方が文化的には進行地だったので、豊かだったように思い込んでいたが、東北の土地の広さは圧倒的である。
過去には冷害や飢饉もあったろうが、元の生産量が違うような気がする。
このような豊かな森だからこそ、ヒデヨシが出てきたとしても違和感がない。
さもありなんという気がする。
米沢の西側に通称「斜平山」という山の連なりがある。標高600メートル程度の低山である。
初期作でこの山から米沢の町の酒屋に「猫正宗」という日本酒を盗みにやって来るのだ。
ちなみにこの猫正宗はアタゴオルシリーズを通して、主人公ヒデヨシの好物で何度となく出て来て愛飲している。
興味をもって調べると、諸説あるのだが、昔米沢でポピュラーな地酒であった「沖正宗」がそのモデルのようである。
今でも同じ名前の商品はあるようなのだが、見付けることが出来なかった。
代わりに同じ酒造会社の日本酒を買ってみた。
飲んでみると悪くない気がした。
思い込み補正があるにしろ、"猫正宗"はいい酒だったと思われる。
今、改めてアタゴオルシリーズをじっくり読みたい。

